2011年11月14日
ステージ#2チェック:航法
おはようございます。上田です。
ここ数日、普通に過ごすには特に問題ない天気でも、有視界飛行(VFR)するには雲が低すぎたりするような天気が続きましたね。
嘉手納での訓練をしている生徒もそんな中での訓練を強いられるわけなのですが、昨日、沖縄本土は晴天に恵まれ、ある生徒のステージチェックを実施してきました。
訓練をまだされていない方にはステージチェックというものが何なのか理解しにくい部分があるかと思われるので、簡単に説明させて頂きます。
例えば自家用飛行機の操縦士資格を取るためにはその訓練課程の途中で何度か単独飛行をしなければいけません。ですが、まだ経験の浅い訓練生に単独飛行をさせるというのは、生徒にとっても教官にとっても一大事なのです。では、その一大イベントをなんなく乗り越えるためには、訓練を円滑に進めなければなりません。そのためには訓練課程そのものをいくつかにレベル分けしなければなりません。例えば、始めの10レッスンをひとくくりにし、次の15レッスンをまた別のひとくくりにするなどです。そしてこれらのひとくくりを「ステージ」と呼ぶようになっているわけです。前述の自家用飛行機の訓練では通常3ステージ設けられています。ステージ#1では初単独飛行や普段飛んでいる周辺空域での単独飛行に要する技量や知識づけをします。その次にくるステージ#2にはステージ#1で学んだことを基にしながら、さらなる技量や知識の確保、つまりはいろんな条件での離着陸や、ある空港からまた別の空港までを色々な方法を使いながら飛んでいく、といったことを学ぶわけです。そして最後のステージ#3は、自家用操縦士になるための試験に向けた準備・総仕上げになるわけです。
そしてこれら「ステージ」の最後または終わりの方には「ステージチェック」が設けられているわけです。これは訓練生の技量・知識の確認のために設けられた「レッスン」で、通常、教官が2人以上在籍しているような学校になると、普段の教官とは異なる教官と一緒に飛行をして、その時点での技量・知識レベルの確認を行うのです。
そして、昨日、行ってきたステージチェックは、ステージ#2のチェックということで、メインはクロスカントリー・フライトの際の技量・知識の確認という内容でした。
アメリカの大学でもステージチェックを受け持っていた私には、ステージ#2のチェックのレベルの訓練生がよくしてしまう間違いというのはよくわかっています。というのは、ステージ#2チェックの訓練生はほとんどがNAVAIDs(航法計器)に頼り過ぎる傾向にあるのです。もちろん、飛行機にある物すべてを効率よく使いながら飛行はすべきです。ただ、それらの物が将来飛ばす可能性のあるすべての飛行機に付いているとは限りませんし、もしくは飛行中に使用不可になる可能性もあります。ですので、自家用操縦士の訓練生には航法のひとつであるDead Reckoningというのを学ばせるわけです。これは天気予報を基に飛行機の速度や方位を割り出し、その通りに飛ばしてみながら微調整をしていく方法です。有視界飛行の場合、飛行機の外が見えているのが条件なので、基本的には特徴ある地形や建物(ランドマーク)を「チェックポイント」とし、それらのチェックポイント通過にどれだけの時間を要したか、飛行機の位置は正確か、といったことを確認していくわけです。
昨日の生徒もNAVAIDsに頼っているように見受けられたので、途中でそれらをオフにしました。ということは、その時点から、生徒自身の準備段階で得られた計算を基に地図とにらめっこしながら飛ばさなければならなくなったわけです。私としては残念なことが、沖縄というのはそれほど大きな島ではありません。ですので、沖縄本島の周りを飛んでいる分には、迷子になることが少ないわけです。それは普通に飛ばすうえでは良いことなのですが、訓練環境ではあまり良い条件ではありません。昨日の生徒も特に迷子になることはなく、あらかじめ自分で設定したコース上を飛んでいました。しかし、割り出されたスピードが実際のスピードよりも少しかけ離れていたのです。これは、チェックポイント通過時の時間の測り方からくるエラーです。私自身や私の生徒がクロスカントリー・フライトに出るときには、必ずチェックポイントの「真上」を飛んだときに時間を確認し、その時間も「秒」単位で確認するようにしています。しかし、大抵の人はチェックポイントから少し離れていても、そこのだいたい上を通過した時に時計の針を見て「分」単位で計算してしまうのです。そうすることによって、エラーが大きくなってしまうわけです。割り出したスピードにエラーが大きいと問題になるのが、予定到着時刻です。予定到着時刻が大きくずれてくると、Flight Plan(飛行計画書)の変更が必要になったり、給油のための目的地の変更を行わなければならなかったりします。それだけ、飛行機の正確なスピードというのは大事な情報なんです。
ちなみに、アメリカでステージチェックを行ったある生徒は、NAVAIDsをオフにしたとたんにコースから離れていき、私がそのとき飛行機がどこにいるのかをあえて問いただすまで、自分はコース上にいると思い込んでいたようです。ただその頃にはすでにコースから10数マイルも離れていました。アメリカの自家用飛行機のライセンス取得には、予定ルートから3マイル以内にとどまり、チェックポイント通過時の時間が予定されている時間から5分以内と定められています。大学のステージチェックには合格・不合格があったので、この生徒は残念ながら不合格となり再チェックを行うことになりました。
これから訓練を行う皆さんや、すでにライセンスをお持ちの方も、有視界飛行の際にはNAVAIDsに頼らずに飛行する練習を心がけるようにしましょう。
ここ数日、普通に過ごすには特に問題ない天気でも、有視界飛行(VFR)するには雲が低すぎたりするような天気が続きましたね。
嘉手納での訓練をしている生徒もそんな中での訓練を強いられるわけなのですが、昨日、沖縄本土は晴天に恵まれ、ある生徒のステージチェックを実施してきました。
訓練をまだされていない方にはステージチェックというものが何なのか理解しにくい部分があるかと思われるので、簡単に説明させて頂きます。
例えば自家用飛行機の操縦士資格を取るためにはその訓練課程の途中で何度か単独飛行をしなければいけません。ですが、まだ経験の浅い訓練生に単独飛行をさせるというのは、生徒にとっても教官にとっても一大事なのです。では、その一大イベントをなんなく乗り越えるためには、訓練を円滑に進めなければなりません。そのためには訓練課程そのものをいくつかにレベル分けしなければなりません。例えば、始めの10レッスンをひとくくりにし、次の15レッスンをまた別のひとくくりにするなどです。そしてこれらのひとくくりを「ステージ」と呼ぶようになっているわけです。前述の自家用飛行機の訓練では通常3ステージ設けられています。ステージ#1では初単独飛行や普段飛んでいる周辺空域での単独飛行に要する技量や知識づけをします。その次にくるステージ#2にはステージ#1で学んだことを基にしながら、さらなる技量や知識の確保、つまりはいろんな条件での離着陸や、ある空港からまた別の空港までを色々な方法を使いながら飛んでいく、といったことを学ぶわけです。そして最後のステージ#3は、自家用操縦士になるための試験に向けた準備・総仕上げになるわけです。
そしてこれら「ステージ」の最後または終わりの方には「ステージチェック」が設けられているわけです。これは訓練生の技量・知識の確認のために設けられた「レッスン」で、通常、教官が2人以上在籍しているような学校になると、普段の教官とは異なる教官と一緒に飛行をして、その時点での技量・知識レベルの確認を行うのです。
そして、昨日、行ってきたステージチェックは、ステージ#2のチェックということで、メインはクロスカントリー・フライトの際の技量・知識の確認という内容でした。
アメリカの大学でもステージチェックを受け持っていた私には、ステージ#2のチェックのレベルの訓練生がよくしてしまう間違いというのはよくわかっています。というのは、ステージ#2チェックの訓練生はほとんどがNAVAIDs(航法計器)に頼り過ぎる傾向にあるのです。もちろん、飛行機にある物すべてを効率よく使いながら飛行はすべきです。ただ、それらの物が将来飛ばす可能性のあるすべての飛行機に付いているとは限りませんし、もしくは飛行中に使用不可になる可能性もあります。ですので、自家用操縦士の訓練生には航法のひとつであるDead Reckoningというのを学ばせるわけです。これは天気予報を基に飛行機の速度や方位を割り出し、その通りに飛ばしてみながら微調整をしていく方法です。有視界飛行の場合、飛行機の外が見えているのが条件なので、基本的には特徴ある地形や建物(ランドマーク)を「チェックポイント」とし、それらのチェックポイント通過にどれだけの時間を要したか、飛行機の位置は正確か、といったことを確認していくわけです。
昨日の生徒もNAVAIDsに頼っているように見受けられたので、途中でそれらをオフにしました。ということは、その時点から、生徒自身の準備段階で得られた計算を基に地図とにらめっこしながら飛ばさなければならなくなったわけです。私としては残念なことが、沖縄というのはそれほど大きな島ではありません。ですので、沖縄本島の周りを飛んでいる分には、迷子になることが少ないわけです。それは普通に飛ばすうえでは良いことなのですが、訓練環境ではあまり良い条件ではありません。昨日の生徒も特に迷子になることはなく、あらかじめ自分で設定したコース上を飛んでいました。しかし、割り出されたスピードが実際のスピードよりも少しかけ離れていたのです。これは、チェックポイント通過時の時間の測り方からくるエラーです。私自身や私の生徒がクロスカントリー・フライトに出るときには、必ずチェックポイントの「真上」を飛んだときに時間を確認し、その時間も「秒」単位で確認するようにしています。しかし、大抵の人はチェックポイントから少し離れていても、そこのだいたい上を通過した時に時計の針を見て「分」単位で計算してしまうのです。そうすることによって、エラーが大きくなってしまうわけです。割り出したスピードにエラーが大きいと問題になるのが、予定到着時刻です。予定到着時刻が大きくずれてくると、Flight Plan(飛行計画書)の変更が必要になったり、給油のための目的地の変更を行わなければならなかったりします。それだけ、飛行機の正確なスピードというのは大事な情報なんです。
ちなみに、アメリカでステージチェックを行ったある生徒は、NAVAIDsをオフにしたとたんにコースから離れていき、私がそのとき飛行機がどこにいるのかをあえて問いただすまで、自分はコース上にいると思い込んでいたようです。ただその頃にはすでにコースから10数マイルも離れていました。アメリカの自家用飛行機のライセンス取得には、予定ルートから3マイル以内にとどまり、チェックポイント通過時の時間が予定されている時間から5分以内と定められています。大学のステージチェックには合格・不合格があったので、この生徒は残念ながら不合格となり再チェックを行うことになりました。
これから訓練を行う皆さんや、すでにライセンスをお持ちの方も、有視界飛行の際にはNAVAIDsに頼らずに飛行する練習を心がけるようにしましょう。
Posted by FSO at 11:28│Comments(0)
│チェック裏話