実地試験実施基準(PTS)前書き編その5
今回も、PTSの中にある、Special Emphasis Areas、について書いてみます。
Runway Incursion ---滑走路上に本来入ってはいけない他機が誤って進入してしまい衝突事故になること、またはその可能性があるということです。管制官の指示を勘違いするといったパイロットのミスが原因とされています。
普段訓練をしている空港であれば滑走路の方向、誘導路の位置など間違えることは少ないかもしれませんが、ちょっとした気の緩みで間違ってしまうこともあります。また初めて行く空港、しかも滑走路が何本もあったり、誘導路が複雑になっている空港ではその危険性がさらに高まります。
試験ではほぼ間違いなく自分が普段訓練しているところなのでそういうミスも少ないのですが、試験を別の空港でやらざる得ない状況になった時、しかも上空でその変更を余儀なくされた時などは、試験というただでさえ緊張している状況ですからミスする可能性は大きくなります。
例をあげると、普段滑走路が1本の空港で訓練していて、突然平行滑走路2本の空港で試験をすることになりました。滑走路番号は20という単に番号だけの空港で訓練していたものが、試験の時には20Lと20Rという左か右かというレフト・ライトの呼称がつきます。管制官の指示は20Rで、パイロットも20Rと復唱したのですが、管制官からの他機の情報などに気を取られて気がつけば20Lに進入していた。滑走路末端で管制官からのGo Aroundの指示がでて事なきを得た。当然試験は不合格です。
別の例は、離陸するために滑走路に近付き、管制官から着陸機がいるためにその場所で待機するように指示されました。Hold Short of Runwayという用語を使いますが、パイロットも復唱したものの、実地試験の一発目の離陸で極端な緊張をしていたのでしょう、そのまま滑走路に向かって動きが止まりません。止まる様子も全く感じられず、滑走路の状態(他機がいないか)や他機の進入がないかの視認も全くなかったため、私がブレーキを踏む羽目になり試験中止、不合格、でした。
どんなに高性能の装備を搭載した飛行機も操縦するのは人間です。人間はミスをするのです。そのリスクをできるだけ少なくするために、しっかりとした計画、確認、そして反復訓練、その繰り返しでしか防ぐことはできません。
試験で普段の空港でやる時には、複雑な空港のレイアウトを出してきてRunway Incursionを防ぐ意識度と知識を口頭で確認します。
このSpecial Emphasis Areasは自家用操縦士のPTSには11あります。これまで7つ見てきました。
続きはまた
たまなは
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